コラム一覧

慢性便秘症と健康

 便秘とは,「本来排泄すべき糞便が大腸内に留まることによる、兎糞(トフン)状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排出できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と定義されています。
 残便感などの症状があった場合を便秘と言うのであり、4~5日排便が無くても、不快な症状が無ければ、心配ありません。
そして、3か月以上症状が続く場合を、慢性便秘症と定義しています。
頻度は、全年齢で、女性4.4%、男性2.5%と、女性で多い傾向にあり、便秘型過敏性腸症候群も入れると、15%にもなります。
 70歳を過ぎると、男女とも、加齢による腸機能低下の為増加し、男女差がなくなります。
慢性便秘症は、一次性と二次性に分けられます。一次性は機能性消化管疾患と言い、消化管の働きが悪くなったもので、ほとんどがこれに当たります。
 その原因として、食事内容、不活動、便意があってもトイレに行かない、等があります。
二次性は薬剤性便秘症(抗コリン薬など)、症候性便秘症(糖尿病など),狭窄性、器質性便秘症(大腸癌など)の三つで、まれですが、注意が必要です。
先ずは機能性消化管疾患にならないように注意しましょう。
最も大事なことは、便意を我慢しない事ですが、詳しくは次回とします。
2024年10月31日

女性ホルモンと健康 その6

 三つの生活習慣病の他に、更年期以降の女性が注意すべき病気に、骨粗鬆症がある事は以前にも書きました。
 骨粗鬆症とは「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義されています。
 骨強度は、骨密度と骨質の両方が関与しており、その関与の仕方は、骨密度が70%,骨質が30%と、圧倒的に骨密度の関与が多いので、診断にはX-線で検査した骨密度を使うことになっています。当院ではそれが可能な検査機器を準備しています。
 骨密度は20歳代前半でピークに達し、少しずつ減少します。そして、更年期過ぎに一度急激に減り、閉経後骨粗鬆症になる方もあります。それを見逃さない為に、50歳代で1回、骨塩量を測定しておいた方が安心でしょう。
女性の骨粗鬆症患者の推定率は、60代前半で20%、60代後半で25%、70代前半で40%、70代後半で45%、80歳代では50%と、何と半分の方が骨粗鬆症と考えられていて、患者総数は1280万人もいます。しかし、実際の治療を受けているは、わずか200万人しかなく、必要なのに治療していない患者さんが1千万人もいるという驚くべき現状があります。
 骨粗鬆症は、骨折して、要介護、寝たきりになる事が多い、怖い病気です。そうならない様に直ぐ、信頼性の高い骨塩量検査を受け、必要なら治療すべです。
最近は良い薬もでき、骨塩量を増やし、骨折を予防できるようになりました。その治療のチャンスを逃さないようにしましょう。

2024年10月31日

女性ホルモンと健康 その5

 更年期は、更年期障害で苦しまない方も、それ以降の人生を、より健康で有意義なものにする為に、絶好のチャンスです。
 つまり、元気な高齢者になるために、症状が何もなくても、更年期の時期に身体のチェックを行って、今後に備えるのです。
 先ず第一番は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病のチェックです。勤務している方は職場で行っていることが多いですが、そうでない方は自分から進んで検査を受けましょう。
 血圧は、人前で測ると、高くなりやすいので、家庭血圧を一か月間測定してもらい診断するようにしています。当院では血圧計を貸し出して,記録してもらっています。
 糖尿病は採血して血糖とHbA1cを測定し、必要あれば精密検査になります。
家族歴のある方、太っている方はより注意が必要です。
 脂質異常症は、血液中の悪玉コレステロールと中性脂肪が高くなり、血管を掃除する善玉コレステロールが減る病気です。女性にとって、更年期以降、最も注意すべき生活習慣病は、この脂質異常症です。
女性ホルモンは、悪玉コレステロールを下げる力がありますが、更年期には
女性ホルモンが減り、悪玉コレステロールが増え、脂質異常症になりやすいのです。
 三つの生活習慣病は、何がいけないかというと、動脈硬化が進んで、心筋梗塞や脳梗塞などの、命にかかわる病気に繋がるからです。
しかし、検査して早期発見すればそれを予防できるのです。
ぜひ検査を受けて、異常があったら治療しましょう。

2024年10月31日

ビタミンCと健康

 ビタミンとは、体の機能を調整し、維持するために欠かせない微量栄養素のことです。
現在12種類知られていますが、脂溶性の、A、D、E、Kの4種類と、水溶性のB1、B2、B3(ナイアシン)、B6、B12、葉酸、パントテン酸、そしてビタミンCの8種類で、合計12種類です。

 ビタミンCは、知っている方も多いかと思いますが、その働きを説明します。
 先ず、老化の原因である活性酸素を抑え、ビタミンEやDらと共同して、アンチエイジングに有効です。
 また、免疫力を強くし、新型コロナなど様々な感染症を抑えます。
そして、皮膚のコラーゲンの弾力性を増し、メラニンの合成を抑え、美容に有効です。しかし、レモンパックや化粧品のビタミンCは、皮膚の角質層でブロックされ奥には入りません、美容で使う場合も点滴投与がより有効なのです。
そして、最後に挙げるのが、抗がん効果です。
抗がん効果は、50年ほど前に,ノーベル賞を2度受賞したアメリカのライナス・ボーリング博士によって発表されていましたが、反対する論文も出て、長く日の目を見ないでいました。しかし、2005年に「ビタミンCはガン細胞を殺す」という論文が「米国アカデミー紀要」に掲載され、再び注目を浴びることになりました。
その後、ビタミンCの抗がん効果に関する臨床試験も沢山行われ、世界では、有効性はゆるぎないものとなっています。
 当院では、アンチエイジング、美容と共に、抗がん作用にも取り組んでいます。ご相談ください。
(点滴療法研究会会員 竹下敏光)

 

2024年10月31日

『フレイル』について

 フレイルとは、英語のFrailty (虚弱)から来ている造語で、加齢により体力や気力が弱っている状態をいいます。
 言ってみれば、「要介護状態」の一歩手前ですが、ここが重要ですが、まだ戻せるのです。
 当院では、表1のように診断し、筋肉トレーニングや栄養指導を行い、フレイルから戻れるようにお手伝いしています。

表1 フレイル診断チェックリスト
□ 6ヶ月間で、意図せず体重が2kg以上減った
□ ペットボトルのふたが開けにくくなった (握力:男性28kg、女性18kgより低い)
□ (ここ2週間)訳もなく疲れたような感じがする
□ 横断歩道を青信号の間に渡りきることが難しくなった(歩いて1秒間に1m進めない速さ)
□ 歩行などの軽い運動や体操を週に1回もしていない

 一つでもあったら受診しましょう!

2024年08月05日

女性ホルモンと健康 その4

 性成熟期の次には、更年期が待っています。
40歳過ぎ頃から女性ホルモンの血中濃度が急激に減少し、月経不順になり、閉経します。
閉経は、1年間月経が来ないことを確認してから決めるので、閉経かどうかは1年後に判定することになりますが、閉経の前後5年間、合計10年を、更年期と呼んでいます。
閉経年齢の平均値は51歳ですので、更年期は40歳代中頃から50歳代中頃の女性が相当します。

更年期という時期は全員ありますが、症状の強弱は差が大きく出ます。全く無くて、普通に生活でき、知らない内に過ぎたという方が三分の一、症状はあったが軽かったので受診しなかった方が三分の一。
日常生活に支障をきたす場合を更年期障害と定義していますが、それは、三分の一ぐらいと言われています。
その症状も、不定愁訴と言われており、この症状があれば更年期障害だ、と言える症状はありません。当院では、簡略更年期指数(SMI)(表1)を参考にして診断していますが、ほとんどの方は、女性ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬治療で良くなります。SMIは表1を利用しましょう。




チェックしてみましょう!症状の程度に応じて自分で〇印をつけて点数を確認。合計点をもとに自分の症状をチェックします。50点以上は要注意。医師の診察、カウンセリングなどを受けましょう。

 

2024年05月24日

女性ホルモンと健康 その3

 思春期を過ぎると、20歳代中ごろから40歳代中ごろまでを「性成熟期」と呼び、月経が順調で、妊娠可能な時期です。
この時期の女性ホルモン値は、通常では高めで安定しており、女性にとって、女性ホルモンの恩恵を、人生の内で最も多く受ける時期です。
 女性ホルモンは、妊娠を可能にするだけでなく、女性にとって嬉しい働きがたくさんあります。
1つ目は骨です。女性ホルモンは骨密度を増やし、HRT(ホルモン補充療法、女性ホルモンを補う治療)の働きによって骨折を予防することが分かっています。
2つ目は動脈硬化です。女性ホルモンは悪玉コレステロール値を下げ、中性脂肪を増やしません。血圧は変動させず、血管の内皮細胞機能を改善します。これらは動脈硬化の予防にとって、とても有益なことです。
3つ目は脳機能です。認知機能の向上には、残念ながら役立ちませんが、うつ状態を改善し、気持ちが明るくなります。
4つ目は糖代謝です。経口HRTは血糖値を下げ、糖尿病の新規発症を抑えます。
5つ目として、HRTは性交痛に効果があります。
6つ目として、皮膚についてです。女性ホルモンは、皮膚のコラーゲン量が増加し、皮膚の厚みが増すと言われています。また皮膚の表層組織のきめ細やかさや皮膚結合組織の粘弾性改善効果があります。

このように健康と美容に有効な女性ホルモンですが、HRT(女性ホルモン補充療法)を行うには、産婦人科医の診察が必要です。
また、この時期の女性が注意すべき疾患があるので、挙げておきます。
子宮筋腫、子宮内膜症、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣嚢腫などが挙げられます。性器出血や下腹痛があったら、直ぐ受診して下さい。症状が無くても、性交経験者は子宮頸がんになりやすいので、年1回、子宮頸がん検査を受けた方が安心です。

 

2024年05月24日

女性ホルモンと健康 その2

 生まれつきの男女の違いを一次性徴、その後に出現する男らしさ女らしさを二次性徴と言い、女性は卵巣からの女性ホルモンの、男性は精巣から出る男性ホルモンの作用でもたらされます。二次性徴の時期を思春期と呼んでいて、年齢で言えば、8歳から18歳頃に当たります。字数制限の為、今回は女性だけ述べることにします。

 女性の二次性徴は、最初に乳房が発達し、次に陰毛発育が起こり、初経は最後です。乳房発育で11歳、陰毛発育で13歳、初経で14歳過ぎてもない場合を思春期遅発症と定義しています。該当する方は、産婦人科か小児科を受診して下さい。 
ちなみに15歳で初経を見た場合、遅発月経、18歳になっても初経がない場合を、原発性無月経と言い、詳しい検査が必要です。
 思春期は、急激な心身の変化が起こり、精神的にも非常に不安定な時期です。自立心が育って、親から離れていくことは良いのですが、不安感、食欲不振、体重減少があるようなら心の病気のこともあるので、受診しましょう。

その他、産婦人科では、月経痛が強い月経困難症や月経前1週間の時期に体調を崩す、月経前緊張症の治療も可能です。また、軽いうつ状態にも対応しています。
前述のような診断が付く程でなくても、月経はつらいことが多く、月経時には試合や試験で良好なパフォーマンスを発揮できなくなってしまいます。
大会や受験に月経が当たらないよう、月経発来日の移動も、簡単で安全にできるので、産婦人科に相談して下さい。

 

2024年05月24日

女性ホルモンと健康 その1

 ホルモンとは、生体の内外に起こった情報に対応して、体内で特定の器官で合成され、
血液などを介して移動し、効力を発揮する生理学的活性物質で、20世紀初めに命名されました。
 ホルモンといえば、血糖値が上がった時、膵臓から出て血糖値を下げる「インスリン」や、甲状腺から出て代謝を良くする「サイロキシン」などが有名ですが、今回は、女性にとって重要な「女性ホルモン」についてお話しします。
女性ホルモンは、子宮の両側に2個ある卵巣から分泌されます。詳しいメカニズムは不明なのですが、女性ホルモンは9歳ごろから量が増加し始め、10歳から14歳で初潮を迎えます。
卵巣から出る女性ホルモンは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種類あります。卵子を包んでいる卵胞からは、脳下垂体から出る卵胞刺激ホルモンの 作用で卵胞ホルモンが出て、卵子を成熟させて、排卵に備えます。
脳下垂体から出る黄体化ホルモンが排卵をおこし、排卵した卵子は卵管に取り込まれ、子宮に向かって運ばれ、卵管内で精子と出会って受精します。受精卵は分割しながら子宮に運ばれ、子宮壁にくっつくことを着床と言い、着床して初めて妊娠したことになります。
卵巣の排卵を起こした部位には黄体が出来て、そこから黄体ホルモンが分泌されます。黄体ホルモンの大事な役目の一つは、子宮内膜を厚くして受精卵が着床しやすくすることです。
ところが、妊娠しないと厚くなった子宮内膜は不要になるので、はがれて子宮から出てきます。これが月経(生理)です。女性にとって 月一回の出血は大変で、貧血の原因になる事もあります。
さらに、月経の痛みが強い月経困難症や、月経前1週間ぐらい体調が悪くなる月経前緊張症という病気もあります。
しかし、大丈夫です! 中学生でも飲める安全な薬があります。
つらい方は、我慢しないで受診してください!

 

2024年05月24日

認知症予防と健康その12

今回は私が考えた認知症予防の8カ条を紹介します。
① 楽しく集中できる趣味を持つ
② 体を動かす。速歩。デュアルタスク(二重課題)運動など
③ 人とのつながりを持つ
④ 多種類の野菜や果物、大豆製品、ナッツ類、青背の魚
⑤ 生活習慣病の治療
⑥ 難聴の予防と治療
⑦ 歯周病の予防と治療
⑧ 予備軍のMCI(軽度認知症)で気付き、早めに治療。

予備軍で気付くためには、図1に示す症状に注意が必要です。心配な方は竹下医院にご相談ください。無料で簡単な検査ができます。


以下の「もの忘れ問診票」をチェックしてみましょう。あなたやあなたのご家族はいくつ当てはまりますか?当てはまる項目が一つでもある場合は検査を受けましょう。                          

もの忘れ問診票

□ 人の名前や物の名前が思い出せなくなった
□ 同じことを何回も聞く・言う
□ 置き忘れ、しまい忘れが増えていつも捜し物をしている
□ テレビ番組の内容が理解できなくなった
□ 買い物などでお金の計算ができなくなった
□ 約束の日時や時間を間違えるようになった
□ 何もせず、家でじっとしていることが多くなった
□ 趣味や好きなことをしなくなった
□ 外出したがらず、人づきあいをしたがらない
□ 下着を替えず、身なりがだらしなくなった
□ 怒りっぽい。ささいなことですぐに怒る
□ お金や物を盗まれた、誰かに盗られたと言うことがある
□ シャツやズボンをきちんと着ることができない
□ 外出すると迷子になる。1人で家に帰れない
□ ガスの消し忘れなど、火の不始末がある
□ 実際には居ない人や動物が見えると訴える
□ 夕方になると落ち着かない。夜中に大声をあげる

 

竹下医院 竹下敏光(日本認知症予防学会 認知症予防専門医)

2022年08月26日

腸内細菌と健康

 ある種の腸内細菌は免疫力を強くして、癌細胞や細菌、ウィルスなどの増殖を抑えたり、自律神経系の働きを整えたりするなど、人間にとって有益なことが沢山ある、ということは以前書きました。
 今回は、2021年12月号の「日本抗加齢医学会雑誌」に載った、腸内細菌に関する情報を紹介します。
 京都府丹後地域は人口10万人当たりの百寿者数が全国平均の3倍もある長寿地域です。
京都府立医科大学循環器内科学教室の内藤裕二教授らは、2017年から丹後地域の長寿因子を探査していますが、腸内細菌も関与している事が分かってきました。
丹後地域の高齢者の腸内細菌は、酪酸菌のひとつであるクロストリジウム菌が多かったのです。但し、丹後地域の孫の世代ではその傾向にはなりませんでした。孫の世代はコンビニを利用しているからです。丹後地域の高齢者の食事で特徴的だったのは、海藻、イモ類が多かったことでした。まだ分かりませんが食物繊維が良いのかもしれません。
 2014年のマサチューセッツ工科大学の研究で、腸内細菌に影響を及ぼすのは、前日に食べた食物繊維量である事が分かりました。これまでのことはともかく、これからは食物繊維の多い食事をすることが健康上重要です。
私も食物繊維が多くなるよう食事に気を付けていますが、子供たちが帰省して来ると、腸の調子がよくなるようです。

 

2022年06月22日

マーラーの曲と健康

 先日、マーラーの交響曲第5番の生演奏を聴いた。私はマーラーの大ファンなので、ダメもとでチケットをおさえておいたのだが、コンサート日がちょうど新型コロナの新規感染がほとんどない時期で、超幸運にも何とか行って来ることができた。
 演奏は日本フィルハーモニー交響楽団、指揮は2016年にマーラー指揮者コンクールで優勝した、シンガポール出身のカーチュン・ウォンである。カーチュン・ウォンは、ミュージカルアメリカ誌で、「深淵で誠実」な音楽性を持っている称賛されている新進気鋭の指揮者で、その通りの素晴らしい演奏を堪能した。
 マーラーの交響曲は1番から9番までと、8番の次に作曲した番号なしの「大地の歌」そして1楽章だけで未完の10番と、全部で11曲ある。その中で人気が高いのは、圧倒的に5番である。ビスコンティ監督の映画「ベニスに死す」では、交響曲5番の第4楽章アダージョを、映画音楽として使っている。映画でこの曲が有名になった為、マーラーの交響曲第5番が好きという方が多いかもしれない。
 しかし、たとえ映画で使われていなくても、ハープと弦で奏でるこの美しい曲を好きにならない人はいないでしょう。11分ぐらいの、クラシック音楽として短い曲なので、是非一度聴いてみて下さい。きっと大いに癒されます。
 第4楽章アダージョと書きましたが、アダージョとは速度記号で「静かに静かに」を意味するイタリア語です。アダージョとつく曲は美しい曲が多く、カラヤン指揮のアダージョ集のオムニバスCDが売られているぐらいです。
 さて、マーラーが最初に書いたアダージョはこの曲ではありません。交響曲第3番の第6楽章「愛が私に語ること」が、マーラーが作曲した最初のアダージョです。私はこの曲も好きで、30年前の開業当時から、外来で流していました。こちらは25分と長いので、簡単にはいきませんが、一度トライしてみましょう。

                              

 

2022年06月22日

アンチエイジングと健康

 アンチエイジング医学(抗加齢医学)という言葉を聞いて皆さんはどのように思うのでしょうか。シワやシミをとるための手術とかサプリメント・化粧品などを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
 そもそもアンチエイジングの考え方は1990年頃に成長ホルモンの投与が外見的・筋力的に若返りをもたらした事をきっかけに始まり、1992年には米国抗加齢学会が設立され健康長寿を目指す学問として急速に世界中に認知されてきました。
 日本では2001年に第一回抗加齢医学研究会が開催され、2002年には研究会から医学会に昇格し、可能な限り商業主義を排除し学問性の追求がなされています。ちなみに私はこの学会の会員になり、専門医資格を取得しています。抗加齢医学は加齢や老化のメカニズムを明らかにし、それに対抗する為にどうしたらいいのかを研究する学問です。
 基礎分野として、遺伝子、細胞医学、活性酵素、免疫、代謝、ホルモンなどと抗加齢との関係、臨床分野では診断法や検査法、食事・身体活動・サプリメントなどの生活習慣と抗加齢の関係、さらにホルモン補充療法・肥満対策・美容と化粧など、非常に広範囲に亘り、医師以外の多業種の方が学会に参加しています。
 さて、人はだれでも生まれた瞬間から加齢を重ねていき、物理学的な時間の長さという加齢は全員同じです。一方、物理学的加齢が作る衰えが身体や精神的に現れるものを生物学的加齢といいますが、こちらのほうは個人差があることは経験的に明らかなことです。もし生物学的な加齢もみんな同じように起こるのであれば、抗加齢という考えそのものが成り立たなくなってしまうのですが、現実は年をとるということは、個人差が広がっていくということに他なりません。若くして倒れる人もいれば、高齢でも元気な人(心身機能の低下が少ない人)もいます。RoweとKahnが1987年に提唱した“サクセスフル・エイジング”(表1)を目指すのが抗加齢医学の使命であり、抗加齢医学は究極の予防医学と言えます。

 表1
サクセスフル・エイジング
1.疾病や障害の原因となる危険因子が少ない状態
2.認知および身体運動機能を良好に保持している状態
3.人生に対して積極的に関与している状態

 

2022年04月01日

アルコールと健康

 慶事、弔事、忘年会、新年会、歓迎会、送別会そして懇親会と様々な場面にアルコールは付物であり、飲酒は文化の一つという地位を獲得しています。そのような時だけではなく日常でも、特に悪い事とは思われずに普通にアルコールは飲まれています。また、2000年前の中国の漢の時代に書かれた「食貸誌」には「酒は百薬の長」とあり、ヒポクラテスも「ワインは最もおいしい薬、最も楽しい食品、したがって最も価値のある飲料である」と述べるなど、健康に有益であることも言われてきました。百寿者のなかにも、日常的に酒類を嗜んでいる人達もいます。確かにアルコールは善玉コレステロールを増やす作用があり動脈硬化の予防になるかも知れませんし、ワインに含まれるポリフェノールは抗酸化作用があります。また、脳の機能を抑制するので心をリラックスさせる効果もあります。しかしそれはあくまでも「適正飲酒をしていれば」の条件が付くのです。現在、厚生労働省が進めている10万人を対象とした研究によると、全く飲まない人達よりも2日に1合(日本酒に換算)程 度飲む人達のほうが総死亡も癌による死亡もリスクが低くなっています。
 しかし毎日2合程度になると飲まない人達よりも死亡リスクが高くなってしまいます。また、脳卒中や自殺では1日3合以上飲む人達で急にリスクが高くなっています。そのようなことからも、適正飲酒とは「1日2合まで、週に2日は休刊日を」といえるかと思います。それでは適正飲酒を守らないで長年飲んでいるとどうなるでしょう。
肝臓の障害がまず思い浮かぶでしょうが、毎日清酒5合を20年間飲み続けると
肝硬変になるリスクが13倍にもなるのです。慢性の食道炎や胃炎そして慢性膵炎もアルコールに関連した怖い病気です。そしてさらに怖いのが発癌です。最近の信頼のおける研究から、肝臓だけではなく口腔、咽頭、喉頭、食道、乳房でも飲酒が直接発癌のリスクを上げる事は確実であると考えられています。アルコールの粘膜への直接作用のほかに、アルコールが体内で変化したアセトアルデヒドに発癌性があるのです。発がん物質であるアセトアルデヒドは分解酵素の働きでさらに変化しますが、この酵素の働きが弱い人達が日本人では
50%ぐらいいます。そのような人達はもともとアルコールに弱いのですが、それを無理して飲んでいると一層発癌の危険が増してしまいます。最後にアルコールはニコチンと同様に依存性があることを忘れてはいけません。アルコール依存症の人は220万人いるといわれていますが、無意識に酒を探すようになったら注意が必要です。酒の文化を享受するのはいいでしょうが、健康の為にしっかり考えたのみ方をしましょう。少し飲んだほうが死亡と癌のリスクが少しだけ低いからといって、これまで飲んでこなかった方はそのまま飲まないほうがいいのは勿論のことです。

2022年04月01日

ウォーキングと健康

 久慈川の河川敷や県立病院通りを歩いていると、朝でも夜でも沢山のウォーカーに出会うが、特に朝はお互いに挨拶を交わして、すがすがしい気持ちになる。 健康を意識する中高年以上の世代の人口が増えたこともあり、以前よりもウォーカーの数が増えたように感じるが、それでも歩かない人のほうが圧倒的に多いのは間違いなく、特に男性ウォーカーは少ない。外来診療の場でも、メタボリックシンドローム、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの予防や治療そして体力を向上して元気で長生きの為に、ウォーキングするように口をすっぱくして勧めるが、患者さんは耳にたこができてもなかなかやってくれない。しかしまれに、ウォーキングが習慣化して、「お陰さまで検査値が正常化して体調もすこぶる良いです」などと言ってくれる患者さんがいると、医者冥利に尽きる。私事で恐縮だが、私はランニングも好きだがウォーキングも好きで、学会などで出かけた時はその土地を歩いたり走ったりして、新鮮な風景や町並みを見ることを楽しみにしている。そのことにより、体力の維持と共に脳の活性化が図られ、充実感が満ちてくるのを感じる。日常でもほとんど毎日歩いているが、特に通勤時を活用して、真直ぐ行くと6分しか掛からない距離を、故意に遠回りして20~30分程歩いている。背のリュックには重い本を入れて重力負荷をかけ、英語のリスニングの教材を聞きながら、時速7kmほどの速歩でエクササイズウォーキングしているのだが、前に歩いている人がいると、ついスピードを上げて追い越そうとする悪い癖はいまだに治らない。朝食後なので血糖が筋肉で使われて血糖の上昇を防ぎ、糖尿病の予防にも一役かっているのだが、糖尿病や糖尿病予備軍の方には、食後のウォーキングなどの運動が、最高の治療である事を強調したい。歩行は1歳の頃から何10年も続けていることなので、特別な練習もなしに、誰でも手軽にできる運動であり、速歩だと男性で21分女性では26分で100キロカロリー消費し、毎日歩くと3ヶ月で脂肪1kgが減ることになる。ウォーキングには、減量やメタボ・高血圧・糖尿病・脂質異常症の予防や治療の他にも沢山の効用があることが分かっている。皆さんが最も恐れている癌の予防にも効果が期待されるが、運動により癌の原因となる活性酸素を取り除く酵素の働きや免疫力が増強し、ホルモンのバランスも癌に罹りにくい状態に変わるのである。特に最近日本で増加している大腸癌は、運動による確実な予防効果が認められている。認知症も運動の予防効果が期待できるが、「平均65歳の人達がウォーキングを6ヶ月続けたところ脳の重量が増し注意力テストの点数が11%よくなった」、「65歳以上の1740名を6年間追跡したところ運動群で認知症の発症が40%少なかった」など、沢山の研究結果がある。自殺に結びつくうつ病も運動の効果が明らかで、抗うつ薬と同じくらいの効果があったと言うデータさえある。さらに、骨粗鬆症の予防に役立つのは言うまでもない。病気の予防になり、体力、足腰が丈夫になるので、ウォーキングを続けていると、健康寿命が延び、死亡率も低下するのであるが、「歩行速度が速いほど死亡率が少ない」、「歩く距離が多いほど死亡率が少ない」といった研究結果もみられる。
 皆さんそれでも歩きませんか?

2022年04月01日

歯周病と健康

 世界では新型コロナの感染のパンデミックが続き、収束はまだまだ見えてきません。
 今回は「世界的規模で蔓延している、人類史上最大の感染症」として2001年にギネス認定された歯周病についてです。
 2017年の厚生労働省が実施した日本人の調査では、歯周病患者数は398万人でしたが、
これは歯科で治療を受けている患者数で、歯周病は未治療の患者が多いので、実際の患者数ははるかに多くなります。
 実際日本人の有病率を見ると、20代ですでに71.1%もあり、年代とともに上昇し、80代では何と90.2%の方が罹患しています。さすが、ギネスが世界一と認定しただけのことはあります。
 この歯周病、治療して治り将来的に悪影響を及ぼさないなら良いのですが、実際は違います。歯周病は、歯を失う原因で虫歯を抜いて一位になりました。さらに、心筋梗塞、脳卒中、骨粗鬆症、誤嚥性肺炎、認知症、そしてなんと早産にも悪影響を及ぼすことが最近の研究で明らかになっています。
 たかが歯周病と侮らずに、しっかり予防することが大切です。
 歯周病の原因は細菌です。人間の口の中には、なんと直腸と同じぐらいの濃度で細菌が住んでいます。その種類は数千種類と言われ、腸内細菌と同様に、善玉菌、日和見菌、悪玉菌に分けられ口内細菌叢を形成しています。
 出産時に母親から菌をもらう事を初めとして、その後沢山の種類の菌をもらい、30歳頃には口内細菌叢が完成します。歯周病になりやすいかどうかはどの時ある程度決まります。
 口内細菌叢の良し悪しは親からもらいますが、自分でよい状態にできる方法があります。それは歯磨きです。
 歯に付着している細菌の固まりをプラークと言いますが、歯磨きはプラークをできにくくしますが、正しい方法で10から15分と充分な時間をかける必要があります。
 また、症状がなくても定期的に歯科受診し、プラークコントロールしてもらうことをお勧めします。

2022年04月01日

オペラと健康

 何故かわかりませんが、私は子供の頃からクラシック音楽が好きで、大学生の頃にはLPレコードやラジオ放送でクラシック音楽を毎日聴いていました。その中でレコードやCDで、モーツァルトやワーグナーのオペラの前奏曲集とアリア集を聴き感動したことを覚えています。
 オペラの映像を初めて見たのは、レーザー・ディスクの時代の25年程前で、モーツァルトの「魔笛」とヴェルディの「アイーダ」でした。その後DVDの時代になり、DVDのオペラ全集を揃えて勉強しました。
 モーツァルト、ワーグナー、ヴェルディ、プッチーニ、ロッシーニなど、沢山の作曲家のオペラを観ましたが、その中でモーツァルト、ヴェルディ、ワーグナーが、特にワーグナーを好きになりました。
 さて、田舎に住んでいると、なかなか機会に恵まれず、初めて生のオペラを観たのはかなり遅く、2001年11月6日、盛岡市民文化ホールで行われたリシャルト・シュトラウス作曲の「サロメ」で、その時すでに51歳でした。
 クラシック音楽もオペラも生演奏が一番ですが、岩手県で上演されるのは、残念ながら年2~3回しかありません。東京では、新国立劇場のオペラハウスを初め、年に30回ぐらいは上演があるので、余りの違いに愕然とします。それでもめげずに年に4~5回は観るように努め、その後16年間で観たオペラは50回程となり、タイトル数は30を数えています。
 その中で私が最も気に入っているオペラは、ワーグナーの「ニーベルンゲンの指輪」です。1回平均4時間半かかり、4回の連作ですので全部で18時間かかる超大作ですが、これまでに4日間を4回観ています。
 オペラは、原語で歌うし、難しいと思っている方が多いかと思いますが、映画と同じで、日本の公園では日本語の字幕が付くので心配ありません。
 いい声のオペラ歌手のすばらしい歌と演技、演出家の舞台としての面白さ、そしてオーケストラの演奏とすべてを含んでいるオペラは、世界一の総合芸術です。WOWOWではニューヨークのメトロポリタンオペラを、月2回放送していますし、DVDもたくさん売られています。皆さん是非試してください。

2022年04月01日

認知症予防と健康 その4

 前回、プレデセン先生の書いた「アルツハイマー病の真実と終焉」という本を紹介し、アルツハイマー病の真の原因は、炎症・栄養素不足・中毒の3つで、それを知るため36のチェック項目があることを書きました。今回は、その中から特に重要な3項目をピックアップして説明します。
最初は、空腹時血糖、空腹時インスリン、ヘモグロビンA1cの糖質代謝の検査です。
糖尿病は、最も重要な認知症の危険因子であることはすでに定説ですが、糖尿病にならないだけでなく血糖値はできるだけ低く抑えるほうがよいことが分かっています。高血糖は認知症に悪いだけでなく癌や動脈硬化にも悪いのです。その為に有効なのが糖質制限食と有酸素運動です。有酸素運動は食後が特にお勧めです。食後30分後頃から血糖値が上昇しますが、運動すると筋肉細胞が糖質を取り込んで使ってくれるので血糖値が下がるのです。
 2番目に細胞保護作用のあるビタミンB1、B6、B12、C、D、E、葉酸の血中濃度をチェックします。数値が低いビタミンは薬剤やサプリメントで補います。特にビタミンDは認知症の予防の他、骨を丈夫にすることは皆さんご存知でしょうが、さらに大腸がんの予防効果があることが注目されています。ビタミンDはしっかり摂ったほうがいいでしょう。
 3番目に不飽和脂肪酸であるオメガ6とオメガ3の血中濃度を測りその比をみます。オメガ6は炎症を促進し、オメガ3は抑制するのでオメガ3が多いほうが良いのです。しかし、私たちが日常生活で普通に取っているサラダ油、天ぷら油などはオメガ6を多く含んでいるので通常の食生活ではオメガ6の濃度が高くなってしまいます。従ってオメガ6の多い油は意識的に控え、オメガ3を多く含む油を積極的に摂ります。
オメガ3脂肪酸とはEPA、DHA、アルファリノレン酸などです。
EPAは魚、特にイワシ、サンマ、サバなどの青身魚に豊富です。積極的に食べましょう。
また、アルファリノレン酸は、亜麻仁油、エゴマ油に多く含まれます。サラダなどでかけて食べましょう。
 この方法は、認知症だけでなく動脈硬化を抑え脳卒中や心筋梗塞予防そして癌の予防にも有効です。

2019年04月27日

認知症予防と健康 その2

日本認知症予防学術集会に今年も参加し勉強してきました。
 第8回を数える今年の集会は9月22日~24日までの3日間東京で開催され、いつも以上に白熱した雰囲気を感じました。というのも昨年初めて認知症予防専門医が誕生しそれに続こうという医師が沢山いて、どの会場もほぼ満席だったからです。
 私は、今年の専門医申請には間に合わず来年の6月に申請して9月には認知症予防専門医の資格を取得できそうです。そして勉強して得た知識を生かして地域の認知症予防の為少しでも役立ちたいと考えています。
 さて、日本認知症予防学会にはエビデンス創出委員会なるものがあります。
エビデンスとは、日本語に訳すと「証拠」になりますが、ある薬、サプリメント、方法などが本当に有効な場合、エビデンスがあると言います。
薬に限らず様々なことが認知症予防のエビデンスがあるかどうか検討することも本学会の大きな使命なのです。
今年、新規にエビデンスありとされたのは、フェルガードというサプリメントです。これは米ぬかから抽出したフェルラ酸とガーデンアンゼリカ抽出物を混ぜたもので抗酸化作用、抗炎症作用、アミロイドベータタンパク質減少作用があり、臨床試験でも優位差を持って予防効果が認められています。フェルガードは当院でも取り扱っています。
 また、音楽療法特に楽器の演奏がエビデンスありとされました。さらに運動が良い事はもう皆さんご存知でしょうが、軽度認知障害を有する308名を対象にした臨床試験でも進行防止効果が確認されました。
 予防法や治療法は、効いたという個人の体験だけでなくエビデンスを確認してから取り入れることが重要です。

2019年04月27日

認知症予防と健康 その3

今年3月に「アルツハイマー病の真実と終焉」という本が発売されました。
この手の一般書は、まゆつばものが多くあまり信用できないのですが、この本は違います。著者はアルツハイマー病の研究を30年以上続けてきた一流の研究者でアメリカ人のデール・プレデセン先生です。
 プレデセン先生は学術誌の論文も沢山発表しているのですが、自分の提唱する方法を少しでも早く広めて少しでも多くの患者さんを救いたいとの思いで一般書を書くことにしたようです。2017年8月にアメリカにおいて英語で出版され、日本語版は2018年3月出版と、すぐ翻訳されています。
 アルツハイマー病は、アミロイド仮説と言われる脳にアミロイドベータが溜まることが原因と考えられてきました。そして脳内のアミロイドベータを減らす薬を作ることに力が注がれ世界中でことごとく失敗してきたのです。
 しかし、プレデセン先生の研究によりアルツハイマー病の本当の原因が分かったのです。
それは、
1.感染、食事そのほかの原因による炎症
2.補助的な栄養素、ホルモン、その他脳の栄養となる分子の不足
3 金属や生物毒素などの有害物質   の3つです。
それらをもっと詳しく「36の要因」を特定しました。その要因を検査により見つけ出し、その要因を正常にするだけでなく最適値にする方法をリコード法と名付けました。
 リコードはReversal of Cognitive Decline(認知機能低下を元に戻す)を意味する英語の頭文字をつなげて作った造語です。
 アルツハイマー病の患者さんを対象にリコード法を行ったところ、約9割に回復が認められたとプレデセン先生達は2014年に医学雑誌に発表しています。9割有効とは驚きですね。
「36の要因」の内容については次回に紹介しますが、食事はグルテンフリー、糖質制限が有効なようです。

2019年04月27日

認知症予防と健康 その1

9月22日から3日間行われた、第7回日本認知症予防学会総会学術集会に参加してきました。この学会は認知症の予防に重きをおいた、設立後まだ7年しかたっていない新しい学会です。
 私の専門は産婦人科ですが介護老人保健施設、介護老人福祉施設、認知症グループホームなどの介護施設を運営している為、認知症には以前から興味があり、昨年1月には認知症サポート医の資格を取得し、この学会には2年前に入会して勉強しています。
 予防といってもこの学会で扱っているのは、発症を予防する1次予防だけではなく、早期発見早期治療の2次予防、病気が進行しないようにする3次予防も含み、薬物に限らず、サプリメント、行動療法も含めて、それが良いか悪いかのエビデンスを出すことを学会の使命の一つにしています。
 そして、やはり力を入れているのが1次予防と2次予防です。勿論、1次予防できて病気にならないのがベストですが、今回はその1次予防について述べたいと思います。
 これまでの研究で、糖尿病の人は認知症の発症が2倍になることがわかっており、脂質異常症や高血圧症でも認知症の発症が増えます。また、歯周病、運動不足、ビタミン不足、会話が少ないなども危険因子です。
 従って認知症予防にはこれらと逆をすればよいことになります。先ずは糖尿病、高血圧症、脂質異常症など生活習慣病の予防が第一歩です。すでに病気の方は、薬剤などでしっかりコントロールしてもらって下さい。歯周病は歯科で治してもらいましょう。歩行などの運動をできるだけ毎日行いましょう。特に運動しながら計算するなどデュアルタスク運動がよいと言われています。食事はこれが良いというものはなく、野菜、海藻、魚を中心にバランスよく摂るようにします。そして家にばかりいないで社交的になること、趣味を持つことです。
 最近は良い薬もできたので病気の進行をかなり抑えられるようになりました。心配な時は受診し、早期発見治療を受けましょう。
竹下医院にはタッチパネル式の5分ぐらいで簡単に早期発見できる医療機器があります。
お気軽にご相談ください。

2019年04月27日

登山と健康

 先日、遠島山(トオジマヤマ)に初めて登った。この山は、久慈市と岩泉町にまたがる標高1,262mの山で、久慈市最高地点であるだけでなく、安家森の1,239mより高く、岩手県北の最高峰でもある。
 この山は県別登山ガイドに載っており、自宅から近いこともあり、そのうち登りたいと以前から思っていたが、私の実力ではまだ無理と思い敬遠していた。しかし、最近登山力が向上したこともあり、無理なら途中で戻っても仕方がないと割り切り、挑戦することとした。
 久慈市門前の自宅から登山口のある久慈市山形町内間木洞までは、車で45分と近い。
内間木洞の少し先の林道が登山口だが、分かりやすく間違うことはない。
 1時間ほど林道を登ると、4合目の少し手前にある遠島山荘に着く。遠島山荘はトイレ、炊事施設がある結構立派な山小屋で、前の広場ではキャンプもできる。
 山荘を後にして、4合目を過ぎると林道は終わり、いよいよ本格的な登山道となり、斜度も増す。5合目には、叩いて音を出すクマよけがあり、それを叩いて進む。それ以外にもクマよけの為、鈴の音と音楽も使う。音楽は、ラジオは電波状況が悪く使えず、ポータブルCDプレイヤーでワグナーの曲を流しながら登った。
 幸いにクマには遭遇せずに、2時間40分で山頂に立つことができ、感激である!
往復5時間、高度差800mの山行であった。
 以前にも書いたが、登山は全身持久力や全身筋力向上、骨量向上に役立つ。さらに、登頂の達成感は意欲の向上につながり、うつ状態を良くするなど、精神面でも好影響を与える。
 登山はまさに、健康長寿の特効薬なのだ。
 私は65歳を過ぎてから登山を始めたので上達は遅いが、次は往復6時間のコースに挑戦したいと思っている。

2019年03月16日

オプティマルヘルスと健康

オプティマル(optimal)を英和辞典で引くと、最善の、最適の、とあります。
オプティマルヘルスとは最善の健康のことで、まさにアンチエイジング医学が目指しているのがそれです。
 30歳、40歳、50歳、60歳と人は年齢を重ねますが、その年齢で望みうる「最善の健康状態」があり、それを維持することが「美しく元気に年をとる」ことになります。
40代の健康状態は、30代の時のライフスタイルに左右されるので、将来のオプティマルヘルスを目指す為には、ライフスタイルを整える必要があります。若い人は健康で元気なので、健康のことなど考えずに無茶をしがちですが、できるだけ早い時期から、健康的なライフスタイル、言い換えると生活習慣を身に着け実行すべきです。
 では、その良い生活習慣とはいったいどんなものでしょうか?
オプティマルヘルスを目指す場合も特別なことはなく、食事、適度な運動、ストレス解消の原則をより忠実に行うことです。
 先ず食事です。抗酸化、抗糖化を考え、何種類もの野菜、海藻を沢山いただき、血糖を上げないよう糖質の多いごはん、麺、パンなどの主食やお菓子、ジュース等は減らし、魚、脂身の少ない肉、卵など良質のたんぱく質を多く含む食品は多くします。卵はコレステロールが多いので、血中コレステロールが上がりよくないと健康に対して目の敵にされてきました。しかし、コレステロールの多い食事をしても血中コレステロール値には影響しないことが判明したので大丈夫です。それから、塩分とおこげは少なくします。
 次に運動です。特別な運動をしてもいいのですが、日常生活で体を動かす活動時間が多いとそれでOKです。私は通勤を遠まわりして1日6㎞程、速足で歩いてます。それと自宅でニュースを見ながらスクワットと腹筋を20分間行います。おかげで今65歳ですが体組成は30歳代を維持しています。
 ストレス解消は趣味を持つことをお勧めします。ちなみに私はクラシック音楽鑑賞が大好きで毎日自宅で聴き、時々コンサートに出かけます。カラオケなどもおすすめですが、くれぐれもアルコールが過ぎないようにしましょう。
 皆さん、是非オプティマルヘルスを目指しましょう!!

2018年06月26日