糖質制限と健康
今回は癌と糖質制限の関連を詳しく書きます。
私たちが生きていく為に、体内では細胞分裂や化学反応が行われており、そのためのエネルギーが必要です。人間は、糖質を分解してエネルギーを作る解糖系システムと、脂肪や蛋白質を材料に酸素を使ってエネルギーを作る有磯素系システムの、二つの仕組みを持っています。
糖質はブドウ糖がつながった物質であるグリコーゲンという形で肝臓や筋肉に蓄えられており、必要に応じてブドウ糖に分解されて、解糖系のエネルギー作りに利用されます。
しかし、体に貯蔵できる量は極少量で、解糖系システムでは長時間活動することはできません。
一方、有藤素系システムは効率よく沢山のエネルギーを作ることができ、材料が脂肪と蛋白質なので、余る程たくさんあります。
食事で糖質を補給しなくても長時間動くことができるのは、有酸素系システムでのエネルギー産生のお陰なのです。
これまでは、脳はエネルギーとしてブドウ糖しか使えないと言われて、脳が働くためにご飯などの糖質をしっかり食べましょう、と言われてきました。
しかし、最近の研究の結果、それは間違いで、脳は脂肪が分解してできるケトン体もエネルギーとして使えることが分かりました。むしろ、ケトン体のほうが効率もよく、人間にとって有益であり、糖質制限は脳にとってもよい方法なのです。
さて、癌細胞はどうでしょうか?癌細胞は生き延び増殖する為に、解糖系システムが必須で、沢山のブドウ糖を消費しています。
癌があるとそこにブドウ糖が沢山集まりますが、それを利用して癌を映像化したのがペット検査です。
がん細胞は、糖質を取り込んで発酵を行っている現象を、発見者の名前を取って「ワーバーグ効果」と呼んでいます。名前はともかく、癌細胞が増える為には、大量の糖質を必要としています。糖質制限は、癌の餌を断つことにつながります。
糖質制限と大量ビタミンC点滴療法で有効であった症例は沢山報告されています。当院にもこの治療を行っている癌患者さんがいます。まだ結果は出ていませんが、有効であることを祈っています。
2019.3 月刊ダ・なす 健康ですか?157回より