がん予防と健康

有名人ががんで亡くなった、というニュースを目にしない日はありません。

2019年の全がん罹患者数は、101万7200人と推計され、前年度より3千600人増加しました。また、がんによる死亡者数は38万300人と推計され、400人だけですが、増えています。今や生涯で、2人に1人ががんに罹り、3人に1人ががんで死亡する時代になってしまいました。

一方、5年生存率で示されるがんの治癒率は、20年前の50%から68.4%とかなり良くなり、がんは治せる病気に変わってきています。診断技術、治療技術の進歩や、検診の充実による早期発見例の増加がその要因です。検診は役に立たない、と書いている医師もいますが、検診の有用性は科学的に証明されていることです。皆さん、積極的に検診を受けるようにしましょう。

検診を受けて早期発見することが2次予防ですが、そもそも病気にならないようにすることは1次予防と言います。がんも1次予防できるならそうしたいと、皆さんは思っているはずです。実は、がんは1次予防できるのです。

先ずは、生活習慣病です。

食事は野菜、果物、海藻、キノコを多めにして、ビタミン、ミネラル、フィトケミカルを充分摂ります。肉、魚、大豆製品から蛋白質を取りますが、赤身肉は大腸がんを増やすので少なくしましよう。そして、最も大事なことは糖質制限です。がんの成長のエネルギーはほとんどが炭水化物です。糖質制限はがんの兵糧攻めになるのです。

次に定期的な有酸素運動です。運動する人は、大腸がん、乳がんが少ないことが分かっています。

禁酒、禁煙は勿論、適正体重を維持しましょう。胃がんの元であるピロリ菌は退治し、肝がんの原因のB型肝炎、C型肝炎もしっかり治療します。

私の専門である産婦人科分野では、古くから子宮頸がん検診が制度化され実施されていますが、検診受診率が低く十分な効果は上げていません。さらに、人パピローマウイルスのワクチンを中学生頃接種することで1次予防できるのですが、これも副作用問題で、接種する人がほとんどいない状況です。諸外国では、検診受診率が高く、ワクチンの安全性が確立され接種者が多く、大きな予防効果を上げています。

 

2020.7  月刊ダ・なす 健康ですか?183回より

2025年06月24日