マーラーの曲と健康

 先日、マーラーの交響曲第5番の生演奏を聴いた。私はマーラーの大ファンなので、ダメもとでチケットをおさえておいたのだが、コンサート日がちょうど新型コロナの新規感染がほとんどない時期で、超幸運にも何とか行って来ることができた。
 演奏は日本フィルハーモニー交響楽団、指揮は2016年にマーラー指揮者コンクールで優勝した、シンガポール出身のカーチュン・ウォンである。カーチュン・ウォンは、ミュージカルアメリカ誌で、「深淵で誠実」な音楽性を持っている称賛されている新進気鋭の指揮者で、その通りの素晴らしい演奏を堪能した。
 マーラーの交響曲は1番から9番までと、8番の次に作曲した番号なしの「大地の歌」そして1楽章だけで未完の10番と、全部で11曲ある。その中で人気が高いのは、圧倒的に5番である。ビスコンティ監督の映画「ベニスに死す」では、交響曲5番の第4楽章アダージョを、映画音楽として使っている。映画でこの曲が有名になった為、マーラーの交響曲第5番が好きという方が多いかもしれない。
 しかし、たとえ映画で使われていなくても、ハープと弦で奏でるこの美しい曲を好きにならない人はいないでしょう。11分ぐらいの、クラシック音楽として短い曲なので、是非一度聴いてみて下さい。きっと大いに癒されます。
 第4楽章アダージョと書きましたが、アダージョとは速度記号で「静かに静かに」を意味するイタリア語です。アダージョとつく曲は美しい曲が多く、カラヤン指揮のアダージョ集のオムニバスCDが売られているぐらいです。
 さて、マーラーが最初に書いたアダージョはこの曲ではありません。交響曲第3番の第6楽章「愛が私に語ること」が、マーラーが作曲した最初のアダージョです。私はこの曲も好きで、30年前の開業当時から、外来で流していました。こちらは25分と長いので、簡単にはいきませんが、一度トライしてみましょう。

                                  (竹下敏光)

2022年06月22日