ウォーキングと健康

久慈川の河川敷や県立病院通りを歩いていると、朝でも夜でも沢山のウォーカーに出会うが、特に朝はお互いに挨拶を交わして、すがすがしい気持ちになる。 健康を意識する中高年以上の世代の人口が増えたこともあり、以前よりもウォーカーの数が増えたように感じるが、それでも歩かない人のほうが圧倒的に多いのは間違いなく、特に男性ウォーカーは少ない。外来診療の場でも、メタボリックシンドローム、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの予防や治療そして体力を向上して元気で長生きの為に、ウォーキングするように口をすっぱくして勧めるが、患者さんは耳にたこができてもなかなかやってくれない。しかしまれに、ウォーキングが習慣化して、「お陰さまで検査値が正常化して体調もすこぶる良いです」などと言ってくれる患者さんがいると、医者冥利に尽きる。私事で恐縮だが、私はランニングも好きだがウォーキングも好きで、学会などで出かけた時はその土地を歩いたり走ったりして、新鮮な風景や町並みを見ることを楽しみにしている。そのことにより、体力の維持と共に脳の活性化が図られ、充実感が満ちてくるのを感じる。日常でもほとんど毎日歩いているが、特に通勤時を活用して、真直ぐ行くと6分しか掛からない距離を、故意に遠回りして20~30分程歩いている。背のリュックには重い本を入れて重力負荷をかけ、英語のリスニングの教材を聞きながら、時速7kmほどの速歩でエクササイズウォーキングしているのだが、前に歩いている人がいると、ついスピードを上げて追い越そうとする悪い癖はいまだに治らない。朝食後なので血糖が筋肉で使われて血糖の上昇を防ぎ、糖尿病の予防にも一役かっているのだが、糖尿病や糖尿病予備軍の方には、食後のウォーキングなどの運動が、最高の治療である事を強調したい。歩行は1歳の頃から何10年も続けていることなので、特別な練習もなしに、誰でも手軽にできる運動であり、速歩だと男性で21分女性では26分で100キロカロリー消費し、毎日歩くと3ヶ月で脂肪1kgが減ることになる。ウォーキングには、減量やメタボ・高血圧・糖尿病・脂質異常症の予防や治療の他にも沢山の効用があることが分かっている。皆さんが最も恐れている癌の予防にも効果が期待されるが、運動により癌の原因となる活性酸素を取り除く酵素の働きや免疫力が増強し、ホルモンのバランスも癌に罹りにくい状態に変わるのである。特に最近日本で増加している大腸癌は、運動による確実な予防効果が認められている。認知症も運動の予防効果が期待できるが、「平均65歳の人達がウォーキングを6ヶ月続けたところ脳の重量が増し注意力テストの点数が11%よくなった」、「65歳以上の1740名を6年間追跡したところ運動群で認知症の発症が40%少なかった」など、沢山の研究結果がある。自殺に結びつくうつ病も運動の効果が明らかで、抗うつ薬と同じくらいの効果があったと言うデータさえある。さらに、骨粗鬆症の予防に役立つのは言うまでもない。病気の予防になり、体力、足腰が丈夫になるので、ウォーキングを続けていると、健康寿命が延び、死亡率も低下するのであるが、「歩行速度が速いほど死亡率が少ない」、「歩く距離が多いほど死亡率が少ない」といった研究結果もみられる。
 皆さんそれでも歩きませんか?

                                (竹下敏光)

2022年04月01日